仏教音楽 御詠歌

ご詠歌に触れてみませんか?
ご詠歌教室を再会いたします
毎月第3土曜日午後2時より3時頃まで 

宗園院本堂にてご詠歌の勉強会をいたします(参加費は不要です)
ご詠歌とは?譜の読み方、唱え方、作法諸々、ゆっくり丁寧に教えますので
初心者の方やご詠歌を全く知らない方も歓迎いたします (現生徒さんも初心者です)
見学のみ、聴講のみも可能です どうぞお訪ねください

次回ご詠歌教室
令和6年11月23日(土)午後2時より


伝統宗教に欠かせないのが音楽です。
こちらでは真言宗に伝わる仏教讃歌であるご詠歌(金剛流)などの動画を紹介いたします。
仏教音楽を通して仏さまの教えを感じてくだされば幸いです。

高野山金剛峯寺の動画館 九州詠歌青年会の動画も併せてご覧いただければ幸いです。



相互供養和讃(そうごくようわさん) new arrange
金剛流でも非常によくお唱えされる相互供養和讃の四部合唱曲です。陽旋平調という曲調です。
私が高野山で初めて習ったご詠歌でもあります。
いくつかアレンジされたものがあるのですが、より斬新なアレンジとなっています。
曼荼羅浄土(まんだらじょうど) 
仏さまの居られる世界=曼荼羅を表現した伸びやかなご詠歌です。
こちらも四部合唱に編曲されて公演でお唱えされました。
陰旋黄鐘(いんせんおうしき)という曲調で、耳に残るきれいな旋律が特徴です。

観音大慈(かんのんだいじ)
観世音菩薩、いわゆる観音さまの慈悲の心を説いたご詠歌です。陰旋黄鐘という曲調です。
1番の歌詞は「観音さまが我々に救いの手を指し伸ばしてくれる」施無畏という働きを述べています。
2番の歌詞では「我々が観音さまの御手にすがる」安心と菩提心を述べています。


父母感恩和讃(ぶもかんおんわさん) 
「ほろほろと なくやまどりの 声聞けば 父かとぞおもう 母かとぞおもう」
亡き父母を偲びそれを詩にしたご詠歌です。
旋律は陰旋平調(いんせんひょうじょう)という悲しげな音階を用いて作られています。
舞踊と共に体感してください。

法悦歓喜和讃(ほうえつかんぎわさん)
仏の教えに触れた喜びを現したご詠歌です。
そのため旋律も陽旋平調(ようせんひょうじょう)という明るい音階で作られています。
またこちらは本来は一部ですが、四部合唱という合唱形式に編曲されています。
三宝和讃(さんぼうわさん)
仏さまと、仏さまの教えと、仏さまの教えを守り伝えるものを三つの宝と称しそれらを讃えるご詠歌です。
全体的に明るい陽旋平調という曲調ですが途中で陰旋黄鐘に転調しています。「尽くるまで」という箇所です。
耳に馴染みやすい旋律を二部合唱で唱えています。詩も良くて私の好きなご詠歌の1つです。
youtubeの説明文を開くと歌詞の全文が載っています。

 

■ご詠歌の旋律と音階について

  • ・旋律について
  • 陽旋という明るめの音階律と陰旋という暗めの音階律の2つで分けられています。

    陽旋ではこの音階を用いる、陰旋律ではこの音階を用いる、というように定まっていますが、転調して陽旋から陰旋になりまた陽旋にもどるということもあります。
    複雑で私も十分には理解出来ていませんので、わかる範囲で書いています。ご了承ください。
    さらに、以降はとても専門的な内容ですので興味のある方はご覧ください。
  • ・音階について
  • 十二律といい十二の音階を用いています。1オクターブを12で割っています。雅楽と同じです。
    初重(しょじゅう)から三重(さんじゅう)までの音階、つまり3オクターブの三十六律で形成されます。
    初重の黄鐘、二重の盤渉といった表現をします。(と言われましてもも「あ、この音だな」とは私は出ません…)
    古来に中国より伝わった音階ですが、中国名と日本名とで異なっていますので、日本で新たに名称がつけられたと思います。

    基本となる音は二重の黄鐘=A=ラの音です。

    京都は妙心寺の国宝「黄鐘の梵鐘」の音色が基準とされています。
    現在はご詠歌用の音階として分かり易く「一から十一」までの数字を当てはめています。
    二重の黄鐘のラは五という音になります。一以下の音、十一以上の音はそのままの名称で表現します。
    (初重の神仙・初重の盤渉など)

    但しこれはあくまで基本で基準の音なので、絶対音ではありません。人よっては声の高い低いや唱えやすい高さなどがあるので、「五」=「A」=「ラ」とせずにもっと低く出したりもっと高くだしても構いません。実際に男性ばかりで唱える時には1音低くしたり、女性ばかりで唱える場合はキーを1音高くしたり1音半高くしたりというような唱え方が認められています。

    さらには五(ラ)の音でも高めの五や低めの五といったものもあり、こうなると楽譜で表すのは困難になります。耳で聴いてその音を覚えることになります。

    下図の右側に初重二重三重と数字で表記をいたしました。このようにご詠歌の音は一応全て西洋音階に対応していますので、五線譜で表記することも当然可能です。しかし、塩梅音といい微妙な音程も用いますのでその辺りは師から習うことが必要になります。譜の通り唱えても違うと言われることもしばしばです(笑)

  • ・ご詠歌の曲調

    金剛流のご詠歌は初重の黄鐘から三重の黄鐘までの二十五律の音階の範囲で作曲されています。
    (下図参照)

    動画の説明欄に調子を書いてみました。法悦歓喜和讃なら「陽旋平調」というのがその曲調です。

    陽旋平調では「この音とこの音を用いる、この音は用いない」といった決まりがあります。
    これは曲調を表現する時や、これを基準として作曲をいたします。陽旋平調の曲調だけどここで悲しげな旋律を加えたいという時はここからここまで陰旋黄鐘に転調ということもあります。曲の早さも全ての曲で定められています。実際の表記とは異なりますが、60分の42といった具合です。
  • ・ご詠歌と日本舞踊

    また、上の動画でご詠歌と共に舞踊を舞うこともあります。舞踊が入る場合はご詠歌のテンポはさらに遅くして唱えるようにいたします。伴奏が無いので詠歌唱人と舞踊人との阿吽の呼吸が大切になります。
  • ・声明の音階

    声明では「宮・商・角・徴・羽」という5つの音階を用います。
    この五音は一定の法則で形成されていますので、十二律のように平均に高低するわけではありません。
    ご詠歌でもこの音階を用いますのでさらにややこしくなります。羽という音も高めの羽や低めの羽などがあり、塩梅の音という表現をいたします。そしてこの五音に反徴、反宮の二音が加わり七音となります。
    雅楽や横笛で使用される音階と同じになります。

  • 音階の名称と比較
    黄鐘(おうしき)が正調音になります。ラの音ですがご詠歌では「五の音」と言います。
    十二律 日本 十二律 中国 西洋音階 階名ハ長 初重 二重 三重
    上無(かみむ) 應鐘(おうしょう) C#    
    神仙(しんせん) 無射(ぷえき) C   六半  
    盤渉(ばんしき) 南呂(なんりょ) B    
    鸞鏡(らんげい) 夷則(いそく) A#     五半  
    黄鐘(おうしき) 林鐘(りんしょう) A   十一
    鳬鐘(ふしょう) 賓(すいひん) G#     四半 十半
    双調(そうじょう) 仲呂(ちゅうろ) G  
    下無(しもむ) 姑洗(こせん) F#     三半 九半
    勝絶(しょうぜつ) 夾鐘(きょうしょう) F ファ  
    平調(ひょうじょう) 太簇(たいそう) E   二半 八半
    断金(たんぎん) 太呂(たいりょ) D#    
    壱越(いっこつ) 黄鐘(こうしょう) D   一半 七半
  • ・おまけ
  • ご詠歌では基本の音は正調といい440Hzのラ(A)でとります。西洋音楽と同じですね。とはいえ曲目によっては音階を上げたり下げたりしても構いません。雅楽では少し低く437Hzが基本の音になるそうです。
  • ご詠歌や声明といった仏教音楽は伴奏などが無いのが特徴です。
    頭(とう)という初めの音を発する者の音階に従って助(じょ)という残りの者が唱えます。頭を取る人を頭人(とうにん)といい、頭人が発する音が高すぎたり低すぎたりすると調子が乱れてしまい、気づけば金切り音に!!ということもあったりします。
  • なので、公演などで大勢でご詠歌を唱える場合は「この曲はこの音で」とキーとなる出音を決めます。より晴れるように1音階高くする、厳かでしっとりなるように低くするといったやり取りをして調整をいたします。2部とか4部とかの合唱曲となるとあまり低すぎると低音が出ないなどとならないようにしています。コンサートでは何度もリハーサルを重ね、頭人は必ずその音を出せるようにしなくてはなりません。かなりのプレッシャーです。

    余談ですが、自坊でお経を唱えるときには私は「りん」「打ち鳴らし」という鐘の音をおよその基準にして発音(ほっとんと読む、発声のこと)をしています。そして、りんを買う時には音色より音程で決めています。「この高さなら自分の声に合うな、出しやすいな」といった具合です。

    お檀家さま宅にお邪魔しますと、普段の音程とは異なりますので調整をして発音をいたします。